スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム

スーパーコンピュータ「富岳」成果創出加速プログラム

アプローチ


核燃焼プラズマにおいて、電磁場擾乱をともなうプラズマ乱流や波動との共鳴相互作用によって熱・粒子・運動量が系外に運ばれる輸送過程に着目し、超大規模計算機シミュレーションとデータサイエンス手法をプラットフォームとして、以下の4つのサブテーマに取り組む。
 
[1] 核燃焼プラズマのマルチスケール乱流輸送シミュレーション
[2] 核燃焼プラズマの自発回転と過渡応答
[3] 核燃焼生成高エネルギー粒子の閉じ込め解析
[4] 核融合大規模シミュレーションへのAI/データ科学の融合的アプローチ

核燃焼プラズマの
マルチスケール乱流輸送シミュレーション



将来の核融合実験研究に向けた理論的指針の確立を目指し、複数粒子種が核燃焼プラズマ中に作り出す異なる時空間スケールをもった乱流、すなわち、 多粒子種マルチスケール乱流によるエネルギーや粒子の輸送シミュレーションを世界に先駆けて実現し、その閉じ込め特性を解明する。そのために、核融合プラズマ乱流輸送の局所シミュレーションでは世界最高水準の性能を持つ5次元位相空間ジャイロ運動論コード GKVを用いて、「富岳」をフルに活用した超大規模5次元位相空間シミュレーションを実施する。さらに、複数粒子種が関わる輸送現象について得られた成果を検証するため、JT-60UやLHD実験との比較、JT60-SAの性能予測を行う。
 
 

核燃焼プラズマの自発回転と過渡応答

 



大域的乱流輸送解析コードGT5Dを用いたエクサスケール数値実験によってプラズマ回転の生成・維持機構を解明する。GT5Dと「富岳」を組み合わせることで、核融合分野で長年の課題となっている、中性粒子ビームによるトルク入力無しに形成・維持される 自発回転の謎に挑戦する。
 
 

核燃焼生成高エネルギー粒子の
閉じ込め解析



高エネルギー粒子・磁気流体(MHD)ハイブリッドシミュレーションコードMEGAを用いて核燃焼プラズマにおけるα粒子に代表される 高エネルギー粒子挙動の解析を実施する。高エネルギー粒子は燃料プラズマを加熱して核融合反応に必要な高温状態を維持する役割を担う。一方で、高エネルギー粒子はプラズマのMHD的な振動との相互作用によってプラズマ外部へ損失する可能性がある。このため、「核燃焼で発生する高エネルギーα粒子がどの程度閉じ込められるか?」、「α粒子を損失させる物理機構は何か?」という問いに答えることは、核融合エネルギーの実現を目指す上で重要な研究課題である。
 
 

核融合大規模シミュレーションへの
AI/データ科学の融合的アプローチ



プラズマに関する第一原理シミュレーションは超大規模計算となり、膨大なデータを生み出す。これまでは研究者が自身の経験と直感に頼って解析対象を選定し、絞り込んだ上で、物理現象を引き出す解析を行ってきた。そこで取り上げられなかったデータは一般に後に使われることはない一方で、その中にも物理的に価値のある有意なデータが存在している可能性は高い。データ科学的手法である機械学習は、人間の能力の限界から生じていた上述の軛を脱し、解析手法の新たな地平を切り開く方法として近年広く取り組まれてきている。そこで、核融合プラズマの大規模シミュレーションとAI/データ科学の融合的アプローチにより 「富岳」を用いた超大規模計算結果の効率的な解析と計算効率の向上を図る。