渡邉智彦 | P研 : プラズマ理論研究室 | 名大物理教室

Aurora brightening (courtesy of NASA)X-class flare (courtesy of NASA)Crab nebula (courtesy of NASA)Turbulence in fusion plasma (by THW)

The fourth state of matter

気化した物質の温度をさらに上昇させ、それが数千度を超えるようになると、粒子または光子との衝突により原子から電子が叩き出されます。この電離過程が十分進行すると、正の電荷をもつイオンと自由電子が混在したプラズマ状態となります。

第4の物質状態 ~ the fourth state of matter ~ と呼ばれるプラズマは、雷放電などを除けばあまり身近なものではないかもしれません。しかし、ひとたび宇宙空間に踏み出すと、そこは真空ではなく、プラズマに満たされた空間が広がっています。
 「宇宙の渚」と呼ばれる高度80kmから800kmにある電離層は、オーロラが乱舞するプラズマ現象の舞台です。もっと高度を上げると、ほぼ完全に電離したプラズマのみで構成される磁気圏に入ります。そこは、磁気嵐と呼ばれるプラズマの突発現象や様々な波動現象が支配する世界です。さらに惑星間空間に出ると、太陽フレアと呼ばれるプラズマの爆発現象により吹き出した超音速プラズマ流、すなわち太陽風が吹き荒れ、電磁場と流れ場が絡み合った乱流が渦巻いています。プラズマの世界は、さらに星間空間にも広がり、超新星爆発でつくられた衝撃波による高エネルギー粒子加速や、天体における種々の構造形成に関わっています。
 一方、1億度以上の高温プラズマを人工的に作り出し、強磁場下で一定時間以上閉じ込めることで制御核融合反応を起し、そのエネルギーを発電に利用することを目指した研究が世界各国で精力的に進められています。こうした核融合プラズマや高エネルギー密度プラズマは、プラズマ物理学の先端的な研究対象となっています。
 物理学としてみたプラズマの特徴は、無数の荷電粒子が電磁場を介して相互作用する集団現象、乱流や衝撃波に代表される強い非線形性、衝突が少ないために熱平衡から大きく外れた非平衡性、が挙げられるでしょう。その結果、プラズマには、多種多様な時空間スケールをもつ不安定性が混在し、それらが位相空間上において複雑な非線形現象を引き起こします。こうしたプラズマ非線形現象について、理論と計算機シミュレーションを使った研究を進めています。